ふきん その2

2015年3月10日
妹の家には食器拭き用のふきんがない。たまに訪問して食器を洗うときは、それが妹でも私でも、ちいさい水切り籠にセンスを駆使して、小高い丘をつくりあげることになる。そして次の食事の用意時や翌日の朝までほったらかすしかなく、それで全部乾燥できるのならいいのだけれど、どこかしら濡れているので棚にしまったりするのに抵抗を覚え、もったいないけれどキッチンペーパーで拭いたり...するのは私で、妹のほうは乾かなければ乾かないで仕方なく、少なくとも自分のやることはもうない!と思っているようで、そのまま元の場所へ戻していく。妹が、そんなもんだと思っているのは、だって、うちの母がそうだったからである。うちにあるふきんは台拭きだけだった。
ふきんで拭き上げれば、次に使うときに皿にへんな水の痕がついていることもないし、せめてしまう直前に拭いたらいいし、たとえば全部拭きあげなくても、小高い丘をすこしは崩したら他のものが乾きやすくなるし、とにかく食器用のふきんを用意しろ、と言ってみると、「だってふきんは汚いんだもん」と答える。「濡れたまま戻すほうが衛生的によくない」「いやいやふきんで拭いた方が衛生的によくない。濡れたふきん汚い」。濡れたふきんが汚いであろうのはそうであろうが、新しいのに取り替え、濡れたものは洗って乾かせばいいのだが、実家にあった台拭きがとくに洗剤など使わず水洗いだけで、干すというよりは流しに置かれたまま、なんだか臭いかも知れないけど臭いを嗅ぎたくない...という扱いだったためか、妹も母のやり口と感覚を踏襲しているのであり、こんな瑣末なことは逆にやすやすとは改訂しがたいものなんだな。新しい料理に挑戦するとかいうよりは、喜びもときめきもだいぶ薄いことだし。
案外、食器用ふきんを常備していない家って多いのかな、と思い、帰宅してエネさんに話をしたら、「そんな、ふきんがないなんて信じられない! 君のおうちだけじゃないかな!」と言う。「いやいや、意外に日本の家庭は用意してないんじゃないかな」と返しても、もともときれい好きなエネさんはシンジラレナイを連発するだけだった。
数日後に会った友人のご夫婦に食器用ふきんの有無を尋ねたら、持っている、と言う。とりあえずは水切り籠に入れておいて、翌朝とか、しばらく経っても乾いていない部分だけ拭いたりします、と女性が答えていたら、男性の方が「実はそのやり方、最初のほうは僕はいやだったんだよね、慣れたけど」と口をはさむ。その理由は「濡れたふきんで拭く方が汚いと思っていた」ということで、私の妹と同じだった。拭くときにはさすがに乾いたものを用いているとおもうけれど、だんだん濡れていくのがとても嫌なものらしい。
職場の先輩に訊いたら「冬はなかなか乾きにくいので、拭く。夏はあまり拭かない」という、新しいパターンだった。

一般論にはできないけれど、たぶん日本の何割かの家庭は、乾き切っていない皿より濡れていくふきんを嫌がるのかな。
ちなみに私は2、3日で2枚つかうくらいのペースで、できれば自然乾燥のほうが手間がかからなくていいけど、全部乾くわけではないし、拭いた方が手っ取り早くしまえるのでほとんど拭いている。

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